第3回集中スクールへの道

CIMG2968.JPG 2012年7月31日から8月4日にかけて、福島県いわき海浜自然の家で開催された第2回集中スクールでは、最大の目標である「イベント」の内容を決めることができませんでした。スクール終了直後から集中スクールだけで話し合ったり、準備するには絶対的に時間が足りず、チームワークを固める上でも月1回程度の定例会議を持つことが指摘されました。この会議を重ねることにより、何とか遅れを取り戻すということが絶対的に必要な条件でした。
 また、8月中旬、東京都内の協力を必要とする機関や企業、個人をたずねて本格的な協力依頼が始まりました。また、9月には統括責任者の三浦がパリに赴き、OECD日本政府代表部、OECD、パリ市当局、パリ日本人会などを訪れて協力依頼をしてきました。
CIMG3157.JPG 9月からはほぼ1か月に1度の会議を定例化させました。ローカルリーダーや生徒、エンパワーメントパートナーによる話し合いが熱心に積み重ねられました。11月にはOECD日本政府代表部の吉川大使が福島を訪れ、いわきチームと懇談しました。また年が改まった2月には、OECD教育局次長のアンドレアスシュライヒャー氏が伊達チームと大熊チームの生徒達と交流しました。伊達チームは、地元JAと協力して,地元の果物を使ったゼリーを開発しており、シュライヒャー氏は「ぜひ商品化を成功させるように」という励ましの言葉をかけられました。
 2月には東北スクール関係の予算も一定認められ、本格的に動き出す見通しとなりました。
 さらに3月には,事務局でパリを再訪し、OECD日本政府代表部主催による「関係者の集い」を開催していただき、出席者にOECD東北スクールの概要を紹介させていただく機会を持ちました。
 このように、東北スクールをめぐる環境が大きく変わった半年でした。


第3回集中スクール開始

 2013年3月26日から29日の4日間、第3回集中スクールが、大震災で津波と火災で大きく被害を受けた気仙沼港を臨む気仙沼ホテル観洋で開催されました。
 第1回・第2回はともに福島県いわき市で開催され、初の福島県外の開催となりました。事務局のある福島大学から遠く離れているために、事前の準備の流れがこれまでと大きく変わりました。幸いにも地元気仙沼市教育委員会がたいへん協力的で、宿泊関係や駅からの交通などでお力添えをいただくことができました。
 一日目は、新たに加わった新メンバー16名の紹介のほか、東北スクールの目標・目的及びテーマの再確認を行うとともに、イベントの意義(様々な地域が同じ目標に向かって進んでいくこと、斬新なアイディアで世界とつながっていくこと、私たちは未来へ向かっていくこと)を全員で共有し、プロジェクト達成への意識を更に高めました。第2回スクールから熟議を重ねた結果、イベントのコンセプトを「死と再生-未来へとつなぐ」に決定しました。
 二日目は、地域別のイベントの計画を視覚化し、成功指数を決めました。また、実現に向けて地域別イベントのガントチャート(イベントまでの予定表)の作成も行いました。
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 大槌町の2名が参加しました。二人の心の中には「大槌は、元気なんだ!中学生でも、東北の復興のためにできることがあるんだ!」という強い思いがありました。二人の話からは、がれきだらけの自分たちの街を見たり、自分の学校で合同葬儀がひらかれたりと非常につらい経験をしてきたことが伝わってきます。展示では、復興のための明るい話だけではなく、震災当時の悲しみ、被害状況も世界に伝えたいと語っていました。
 相馬チームの地域の伝統行事「相馬野馬追」をパリで披露するということは早くから決定していましたが、熟議を重ねるうちに、パリで私たちが伝えたいことは何かを原点にかえって考えました。その結果、相馬野馬追をすることは、死への鎮魂、死からの再生につながるのではないかという結論が出ました。また、甲冑職人の減少など、震災前からの問題にも向き合っていきたいと話は広がっていきました。
そのほかにも、各地域から次のようなイベント案が出されました。
   <いわきチーム>巨大ドミノ・モザイクアート・メッセージ(感想)ボードの設置
   <気仙沼チーム>思いを込めた天旗をあげよう(天旗の展示、写真展示)・気仙沼の海産物の試食会
           ・ILC(インターナショナルリニアコライダー)の本体模型の展示
   <安達チーム> 習字で日本を伝える・福島の安全と環境を伝える
   <相馬チーム> 相馬野馬追・甲冑展示・震災ドキュメンタリー
   <戸倉チーム> 鹿子踊・戸倉の牡蠣のふるまい
   <大熊チーム> 短編映画上映・浪江焼きそばの試食会
   <大槌チーム> 復興後の公園をつくる(3D技術を使う)・木碑の模型展示
   <女川チーム> がれきアート(デジタルサイネージを使って展示)・AR技術を使って被災したパリのイメージを見せる


iPad100台!

CIMG3373.JPG 三日目は、テーマ別に4つの班に分かれて活動しました。イベント班は、イベント当日の大まかなスケジュール案や開催地の決定をしました。コミュニケーション班は、ロゴを発表しました。100人の参加者が自らのチーム名を「環」と名付け、キャッチコピーは「私たちは、過去を超えます。常識を超えます。国境を超えます。」と決めましたが、ロゴは、それらの意味を表すように製作しました。ドキュメンタリー班は、制作活動の検討を行い、産官学連携班は、協賛依頼したい企業リストを作成しました。
 四日目は、遠隔地の生徒たちが協働して活動を行うために必須であるツールとソフトウエアを得るという課題解決の実践の日で、ソフトバンクモバイル社へ、代表生徒がipadの賃借交渉のプレゼンテーションを行いました。プレゼンでは、端末がないことによるチームワークへの障害など必要性だけでなく、相手にとってのメリットも示唆しました。特に、起こりうる問題も想定し、親の懸念に対するフィルタリングやネットトラブルについても言及したことが評価され、ソフトバンクモバイル社からipad100台の無償賃借を約束していただきました。その後、スクールの活動についてのアンケートを参加者全員に行い、その内容をグループで共有し、発表しました。最後に、写真撮影をした後、夏の再会を誓い合いました。

被災地の生徒の思い

CIMG3387.jpg 世界中に被災者のそれぞれの思いや、私の被災体験の話を世界に発信したい、それが東北スクールに参加しようと思った理由です。
私は、今回初めて参加しました。初対面でしたが、メンバーの皆は、優しく社交的ですぐになじむことができました。スプリングスクールでは、メンバーそれぞれが自分の意見を持っていて、意見を自主的に発言することに驚きました。また、個人個人が“自分にとっての復興”について考えを持っていることをうれしく思いました。
今回のスクールを通して他人にわかりやすく伝える難しさを痛感しました。私にとってのイベントコンセプトのイメージは被災・風評被害などの殻をどんどん破って、私たち被災地の中高生が未来をつくりだすというものです。メンバーが、さらに団結を深めれば、イベントの可能性もさらに広がるのではないかと思います。

(本記事を作成するに当たり、奈良チームの報告書を参考にさせていただきました。)

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